「シェアで世界はどう変わる?」【ゲスト:石山アンジュさん&工藤慎一さん】


みなさん、こんにちは!TABIPPO編集部の西嶋です。

今回は、1月22日にTABIPPOオフィス本社で行われた講義 「シェアリングエコノミーがもたらす新しい社会と生活」の様子をレポートします。登壇者は、石山アンジュさんとecboの工藤慎一さんです。※ゲストプロフィール詳細は、文末に記載しております。

 

石山アンジュさん


今回の登壇者の一人目は、一般社団法人シェアリングエコノミー協会の事務局長を務める石山アンジュさんです。シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案するだけでなく、政府と民間をつなぐパイプ役として、規制緩和や政策推進にも携わっておられます。

今のお仕事に就くきっかけになったのは、新卒で入社したリクルートで、個人の自由や人生よりも組織の利益が優先されてしまうという事実を目の当たりにしたこと。もっと個人が自由に生きていける世の中を作りたいという想いのもと、シェアをこれからのスタンダードにするべく活動されています。

 

新しい幸せのかたち

Airbnb、メルカリ、Pairs……シェアサービスが浸透するにつれ、ついさっきまで他人だった人の家に泊まったり、知らない人の自家用車に乗せてもらって移動したりすることが当たり前になりつつあります。

そんな私たちに、石山さんはこう問いかけます。「子どもの頃、お母さんから『知らない人の車に乗っちゃ駄目よ』と教わりませんでしたか?」

かつての常識とは180度違うサービスが生まれ、さらにはインフラ化しつつある昨今。個人間で売買・貸し借り・共有などが簡単にできるようになり、新しい社会の仕組みが生まれ、ライフスタイルも変化を遂げています。

シェアの経済規模は過去最高の1兆8,000億円を越え、2030年には11兆円にまで達すると予測されているほど。シェアが生活の充実度や幸福度の向上に寄与しているというデータもあるそうです。(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000022734.html

ただコストを抑えるためにシェアするだけでなく、消費を通して人とつながることも出来る新しい豊かさの形でもあります。

 

シェアで変わる「働き方」と「家」

-「働き方」が変わる
シェアによって、個人主体型の経済活動が可能となり、従来の働く世代だけでなく、子育て中の女性、地方に住む高齢者、障がい者など、誰もが「稼げる」機会を得られるようになりました。世界中の人を対象に、個人が持つ経験・知識・場所・モノなどを提供して、好きな場所で・好きな時間に・好きなだけ仕事をすることも可能になりました。(インターネットを使うと、仕事の自由度が広がるという意味ですね)

-「暮らし」が変わる
シェアによって、複数の拠点を持つことも珍しくなくなります。好きな場所で仕事ができるので、「オフィスに通いやすいこと」を住まいの条件にする必要もなくなり、好きな場所を選びやすくなります。

また、借りる/買うだけでなく、一般の人でもAirbnbをはじめとする民泊サービスの誕生により、家を貸す/宿にするという選択肢を気軽に持てるようになりました。さらに、趣味・価値観の合う人と家をシェアする人も増えていくと思います。

 

シェアの事例

「シェアリングシティ」という取り組みを展開している自治体が、日本には76あります。

たとえば、北海道北部に位置する天塩町(てんしおちょう)。過疎化が進んだ天塩町では、公共交通サービスの維持ができなくなり、バスの本数が減っただけでなく、タクシー会社も撤退してしまいました。

そこで始まった取り組みが、「自家用車に誰かを乗せて運転出来る人」と「乗せてほしい人」をマッチングするというもの。「自家用車を持っていて、時間が空いている人」が例えば「病院まで乗せていってほしい高齢者」を救うことも出来ます。

これらの「共助」の発想は、人口減少地域だけでなく、オリンピックをはじめとする大規模イベントや、災害時でも活用できると注目されています。

 

信頼のかたちも変わっていく

「時代と価値観が変化し、豊かさのパラダイムシフトが起きています」と石山さんはいいます。

豊かさの定義は「所有」から「共有」へ、個人の価値は「ステータス」から「信頼」へ、そして「わたし個人主義」から「私たちみんな主義」へと変化しました。その結果、
「頼れる人や安心できるつながりがをどれだけあるか」が、大事な時代になったのです。

第一の信頼は「ローカルな信頼」。例えば、お隣に住む石山さんから何のラベルもついていないお醤油を借りたとしても、「石山さんから借りたお醤油だから大丈夫」と信頼できることを表します。

第二の信頼は、「制度に預ける信頼」。「国が認めた基準を満たしているメーカーのお醤油だから大丈夫」という信頼です。

第三の信頼は、「分散化された信頼」。これこそが、シェア時代の新しい信頼の概念です。味見した100人による「このお醤油には、毒は入ってなかったよ」という集合知を信頼するものです。「食べログ」もこの「分散化された信頼」の一例だといえそうです。

「第三の信頼の時代だからこそ、新たな信頼のデザインが求められます。ユーザーもまた、リテラシーを高め、サービスに頼るだけでなく、自分で見極める力をつける必要もあります」と石山さんは締めくくりました。

 

工藤慎一さん

二人目の登壇者は、ecbo株式会社の代表取締役社長、工藤慎一さんです。Uber Japanの立ち上げインターンを経て、2015年6月にecbo株式会社を設立。2017年1月より「荷物を預けたい人」と「荷物を預かるスペースを持つお店」をつなぐ、荷物預かりシェアリングサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」を運営。さらに2019年9月には、宅配物受け取りサービス「ecbo pickup(エクボピックアップ)」を発表されました。あの本田圭佑さんから出資を受けたこともあるそう!

ecbo pickup(エクボピックアップ)…カフェや美容室、カラオケ店など50業種以上あるecbo cloak(エクボクローク)加盟店で、EC等で購入した宅配物のかんたん受け取りができる、日本初のサービスです。

 

「エクボクローク」って?

工藤さん率いるecboが提供するサービス「エクボクローク」は、スマホ予約でかんたんに荷物を預けることができるサービスです。

みなさん、せっかくの旅行なのにコインロッカーが埋まっていたり、サイズが合わなかったり、荷物を預けられず「コインロッカー難民」になったことはありませんか? 工藤さんらの試算によると、日本中の「コインロッカー難民」は、1日あたり17.6万人。コインロッカーに荷物を預けるまでにかかる時間は平均24.9分にのぼります。

とはいえ、駅ナカにこれ以上コインロッカーを作ることはできません。そこでひらめいたのが、街中のお店や施設に荷物を預かってもらうというアイデア。小さい荷物(バッグサイズ)なら400円、大きな荷物(スーツケースサイズ)でも700円で預けることができます。

現在全国47都道府県・1,000店舗以上に導入されており、旅行やお出かけ、出張、イベント等の際にぜひ利用したいサービスです。

*バッグサイズ:最大辺が45cm未満の大きさのお荷物(例:リュック、ハンドバッグ、お手荷物など)、スーツケースサイズ:最大辺が45cm以上の大きさのお荷物(例:スーツケース、ベビーカー、ギターなど)

ユーザーのメリットは、コインロッカーを探す手間が省けることと、事前に予約することで確実に荷物を預けられること。保険会社と提携しているため、万が一の紛失・破損・盗難もばっちり補償されるというから安心です。

オーナー(荷物を預かるお店)のメリットは、登録・導入・維持コストがゼロなのに、お店の空いたスペースが副収入を生むこと。ユーザーがお店に足を運んでくれることで、新規顧客の獲得にもつながります。

ユーザーの手順は、ユーザー登録→事前予約・クレジットカード決済→実際にお店へ行って、店員さんに荷物を預けるだけと、あっという間に完了!荷物を預けたらお店のスタッフ(オーナー)が荷物の写真を撮影します。ユーザーへ共有され、これが荷物の預かり証となります。荷物を引き取るときは、預かってもらった荷物の写真を見せるだけです。言葉が通じない外国人観光客でもスムーズにできて、番号札などの備品の必要もない、シンプルながら画期的なシステムです!

2017年1月に渋谷・浅草を中心に都内でサービスをスタートさせ、今や47都道府県、1000店舗以上に広がっています。パートナーも、JR東日本や西日本、マルイ、郵便局、ビッグエコーなど、誰もが知る企業・機関ばかり。

 

Q.「エクボクローク」を着想した背景や原体験は?

「どんな事業を展開するにせよ、一番大事なのは“のめりこみ度”です」と工藤さん。起業を成功させるには、うまくいくまでひたすらトライするしかありません。成功するまでやり続けるための燃料になるのが、“原体験”です。

工藤さんの原体験は、小学3年生で初めて経験した商売。日本で1枚10円で売られていた遊戯王カードが、中国で100円で売られていることに気づいた工藤さんは、お父さんから1万円を借り、日本で買ったカードを中国のカードショップで売ることに。1万円の元本は、なんと14万円になったそう!

この経験から、「ちょっと動いただけで稼げるんだ!」と気付いたそうです。また、「僕が動いたことでカードを流通させることができた。必要なところに必要なものを供給すると、こんなに喜ばれるんだ!」と、商売の喜びを知るきっかけになりました。

 

Q. シェアリングエコノミーに着目したのはなぜ?

工藤さんは、シェアリングエコノミーにこだわっていたというより、「いかにサステイナブルにサービスをつくれるか」に興味があったそう。ただ生産して消費するというサイクルではなく、持続可能なサイクルを循環できるプラットフォームを考えていたところに、現在の事業が思い浮かんだと話してくださいました。

サステイナブルなサービスを考えていたときに出会ったのが、Uber。「Uberのやろうとしていることこそサステイナブルだ」と感じ、インターンとしてジョインしました。

Uberでの経験を経てなお、シェアリングサービスを始めようとは思っていなかったそう。でも、リソース(お金とヒト)が足りなかったため、必然的に、持ち出しの少ないシェアリングサービスに着地したとのことです。

 

Q. アイデアを形にするまでにやったことは?

何より大切なのは、根気強くやること。工藤さんは300個ほどアイデアのストックがあり、何度もチャレンジと挫折を繰り返してきたそう。それでも諦めなかったから今があるといいます。

また工藤さんは、「いいアイデアの定義は、効率よく世の中の課題を解決できる(=一つのアイデアで複数の課題を解決できる)こと」だと断言。たとえば「エクボクローク」は、オーナーの作業は「預かって、写真を撮って、荷物を渡す」こと、「エクボピックアップ」も「預かって、バーコードをスキャンして、荷物を渡す」こと。登場人物が違うだけで、コインロッカー不足問題と再配達問題という、2つの課題を解決できるのです。

「お金をかけたら戻れなくなるので、最初はできるだけリソースを使わないように」とおっしゃっていました。

 

ワーク「あらゆるものがシェアされると、どんな世の中になる?」

最後にワークとして、「お金、時間、場所、ヒト、食事……あらゆるものがシェアされると、どんな世の中になる?」というテーマで話し合いました。主な意見をシェアします!

・個人の信頼を計るための「信頼ポイント」のようなものが導入されるかも?
・シェアが広がりすぎると、税収が減って公共サービスが手薄になるかも?
・家族シェア、恋人シェアなどのサービスも生まれるかも?
・アイデア次第で何でもリソース化できるようになるかも?

以上、石山さんと工藤さんにご登壇いただき、シェアについて考えた回でした!

 

ゲストのご紹介


内閣官房シェアリングエコノミー伝道師/一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長/一般社団法人Public Meets Innovation代表理事

1989年生まれ。「シェア(共有)」の概念に親しみながら育つ。2012年国際基督教大学(ICU)卒。新卒で(株)リクルート入社、その後(株)クラウドワークス経営企画室を経て現職。 シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案する活動を行うほか、政府と民間のパイプ役として規制緩和や政策推進にも従事。

総務省地域情報化アドバイザー、厚生労働省「シェアリングエコノミーが雇用・労働に与える影響に関する研究会」構成委員、経済産業省「シェアリングエコノミーにおける経済活動の統計調査による把握に関する研究会」委員なども務める。2018年米国メディア「Shareable」にて世界のスーパーシェアラー日本代表に選出。ほか NewsPicks「WEEKLY OCHIAI」レギュラーMC、拡張家族Cift メンバーなど、幅広く活動。著書「シェアライフ-新しい社会の新しい生き方(クロスメディア・パブリッシング)」がある。

 


ecbo株式会社 代表取締役社長。

1990年生まれ、マカオ出身、日本大学卒。Uber Japan株式会社を経て、2015年6月ecbo株式会社を設立。2017年1月より荷物預かりサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」を運営。2019年9月宅配物受け取りサービス「ecbo pickup(エクボピックアップ)」を発表。

2018年 Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2018 – Business Entrepreneurs部門に選出、2019年 Forbes 30 Under 30 Asia 2019 – Consumer Technology部門に選出。

Text:西嶋結
Photo:齊藤真佑