「これからの時代に必要なOSは“自己肯定感”」【ゲスト:LIFULL井上社長】

こんばんは、ライターの西嶋です。

2019年6月より始動した21世紀型グローバル人材育成プログラム「POOLO」。これまでに10数回の講義を実施し、参加者の熱は高まるばかりです。

 

今回は、8月2日にLIFULL本社で行われた講義 「世界平和を目指す経営とビジネス論。」の様子をレポートします。登壇者は、株式会社LIFULL 代表取締役社長の井上高志さんと、株式会社TABIPPO 代表取締役の清水直哉さんです。

 

登壇者は?

井上高志さん
新卒入社した株式会社リクルートコスモス(現、株式会社コスモスイニシア)勤務時代に「不動産業界の仕組みを変えたい」との強い想いを抱き、1997年独立して株式会社ネクスト(現LIFULL)を設立。インターネットを活用した不動産情報インフラの構築を目指し、不動産・住宅情報サイト「HOME’S(現:LIFULL HOME’S)」を立ち上げ、掲載物件数No.1(※)のサイトに育て上げる。

コーポレートメッセージには、社名の由来である「あらゆるLIFEを、FULLに。」を掲げ、不動産領域だけでなく、地方創生、介護、引越し、インテリア、クラウドファンディングサービスなど暮らしに関わるあらゆるサービスをLIFULLグループとして展開。近年では海外事業も拡大し、国内外併せて約20社のグループ会社、世界63ヶ国にサービス展開している。※産経広告社調べ(2019.1.7)

清水直哉さん(モデレーター)
創設から今までTABIPPOの代表を務める。東京学芸大学にてサッカー漬けの日々を送るが、人生に悩み、世界一周の旅へ。 旅で出会った仲間とTABIPPOを立ち上げる。 卒業後はWEB広告代理店の株式会社オプトへ入社、1年目からソーシャルメディア関連事業の立ち上げに参画。最年少マネージャーの経験などを経て2013年11月に退職、 TABIPPOにて法人登記を果たす。趣味は自分探し、夢は「やりたいことを、やりたいだけ、やりたい場所で、やりたい時に、やりたい仲間と、やり続けること」

 

社是は利他主義、人生のビジョンは世界平和

まず、井上さんのご経歴の紹介から。

井上さんは、リクルートを経て26歳で独立。現在は株式会社LIFULL 代表取締役社長として、「世界一のライフデータベース&ソリューション・カンパニー」をめざしておられます。

社是は「利他主義」。「この時代に日本に生まれたこと、恵まれていると感じませんか?僕は、世界を旅するなかで、本当に恵まれていると思ったんです。たとえば、基本的人権のない江戸時代に生まれていたら?今日を生き抜くのがやっとの、アフリカの貧困エリアに生まれていたとしたら?僕たちが恵まれているのは、先輩たちが安全・安心な時代をつくってくれたからです。だから、‟自分だけがよければいい”ではバチがあたると思っています」と井上さん。

 

また井上さんは、POOLO世代のことを「ペイフォワードの精神を持っている世代」と表現されていました。地位や成功よりも、やりがいや、世の中をよりよいほうに変えられることを重視している世代。確かに近年、そうした雰囲気が主流になりつつありますよね。

井上さんは、人類の幸福・世界平和は「心×社会システム×テクノロジー」という方程式で表せると考えています。その信念のもと、心、社会システム、テクノロジーのそれぞれの項を充実させるべく、Next Wisdom財団やPEACE DAYフェス、Living Anywhereテクノロジーなどといった活動にも注力されているそう。

そんな井上さんが「個人的な人生のビジョン」としているのは、世界平和です。ライフステージを4つに区切り、75歳までに所得ピラミッドの最下層に位置する40億人が自立できる社会の実現を、100歳までに国家間の紛争がない社会の実現をめざしています。そして、9/21を全世界共通の祝日「PEACE DAYとし、ケンカから戦争まで、あらゆる争いをしない日として定着させることが夢だそう。

LIFULLは旅人採用でも、就活生に大人気だと清水さん。「だってみんな、こんな社長の下で働きたいよね!」とおっしゃっていましたが、完全に同意です!

 

これからの人材の核は「自己肯定感」

これからの時代、OS(operating system)がしっかりしていない限り、何をやってもだめだという井上さん。

それに対して清水さんは、「マインド(≒OS)がないと、いくら学んでもスキルやナレッジは身につかない。スキルやナレッジの前にマインドをみんなで身に付けるのがPOOLOです」と発言。

井上さんは、OSの核となるものとして、「自己肯定感」を挙げてくださいました。これは、旅人には自然と備わっているものだそうです。なぜなら、行ったことのないところに行き、会ったことのない人に会うという経験は、自分を拡張し、自己肯定感を育むプロセスだから。


自己否定の人は、「ひとりで行くなんて怖い」「絶対に無理」というマインドです。「自分を信じて未知の世界にダイブせよ!」という、井上さんからのメッセージを感じました。

清水さんがTABIPPOを立ち上げたのも、旅の経験があったから。「旅をして、日本の当たり前が世界の当たり前じゃないことに気付けた。いろいろなことを知れたからこそ自分のことを認められるようになったし、人のために何かをしたいと思えるようになった」といいます。「日本を変えるには旅しかないと思っている」というフレーズが印象的でした。

 

「起業のきっかけはなんでしたか?」

ここからは、参加者からの質問に答えていただきました。

もとをたどれば、21歳のとき、3年半付き合った彼女にフラれたことがきっかけ。彼女は、ニュースキャスターになる夢を追いかけるためにNYへ。一方、当時の井上さんには夢がない。しかも、就活で出会う学生たちが自分よりも格段に優秀であることにも気付き、愕然としました。

「俺、イケてない。馬車馬みたいに働いて、5年かけてダメダメな俺を鍛えなおそう。その後は、一生かけて事業をつくる。そうしないとカッコ悪い」――そう考えたそうです。当時の井上さんには、不動産の知識どころか、何かを成し遂げた経験すらなかったにもかかわらず。

不動産業界を選んだのは、「とにかく市場も、動くお金も、責任も大きい、そして大きな喜びを得られる仕事がしたい」という想いから。しかし業界の中に身を置いてみると、その不透明性に衝撃を受けます。そこで正義感に火が付き、「クリーンな業界に変えてやる」と決意して、物件の情報をオープンにするプラットフォーム「LIFULL HOME’Sを考案したそう。

「なぜ世界平和をめざすようになったんですか?」

32歳のとき、ベンチャー社長をやっているリクルート時代の同期に「将来何をしたいの?」と聞くと、「世界平和」という答え。それを聞いて「やられた!」と思った井上さんは、「俺も世界平和が夢」と返したそう。

井上さんはなんと、起業するまで、リーダーなどの役割についたことがなかったといいます。めざすゴールのために理想と現実のギャップを埋めていき、意識的に人格改造をしたと話してくださいました。

 

「20代のときのマイルールを教えてください」


井上さんの20代のときのマイルールは、「躊躇したら前に出ること」と「有言実行」。「いつまでに~する」と決めて、周りに宣言し、踏み出すことが重要だといいます。宣言することで、周りから「進捗どう?」と声をかけてもらったり、似たような志を持っている人を紹介してもらえるようになるというメリットがあるからです。

また、「やろうと思ったことは全部やれ」というアドバイスも鮮烈でした。考えるべきは「AかBか」ではなく、「どうすればAもBもできるか」。若いうちは、あまり考え込まず、思い切って飛び込むというマインドを大事にしたいものです。

 

「利益と社会貢献、どちらを優先させますか?」


「TABIPPOも利益と社会貢献のバランスが課題です」と清水さん。ボランティアではないので、いくら世の中のためになるからといっても、まったく実入りのないことをするわけにはいかないものです。

井上さんによると、自社の社員からしばしば同じことを質問されるそう。そんなとき井上さんは、「どちらかしか選べないなら、迷わず利他主義を選べ。だけど、そんな状況に立たされることはめったにない。両方を高次元に実現するのが経営だ」と答えています。
ここで印象的だったのは、「テクノロジーの発達にともない、ビジネスにかかるコストは少なくなるはずだ」という論。

たとえば、「教育を受けられない子どもたちに教育を提供する」というミッションがあったとします。今までであれば、学校を建てて教科書を配布して……と、膨大なコストがかかっていたはず。でもテクノロジーが発展すれば、「スマホを配って講義をテキストメッセージで配信する」という方法も採用できるわけです。これだと、その家の大事な労働力である子どもたちも、仕事と勉強を両立することができますよね。それと同時に、今までとは比較にならないほど低いコストで、今までよりも豊かな教育を提供できるのです。

「NPOなどの小資本でも、十分な社会的インパクトを残せる時代がやってくる」と、井上さんは語ります。

これには清水さんも同意。「社会貢献していない企業は、やがて消費者にも選ばれなくなるはず」とおっしゃっていました。

 

「若者が身に付けておくべきスキルはなんですか?」


井上さんがまず挙げたのは、「幸せの4因子を備えること」。幸せの4因子とは、慶応義塾大学の前野隆司教授が提唱されているもので、「自分らしく」「やってみよう」「なんとかなる」「ありがとう」の4つです。

井上さん曰く、この「幸せの4因子」は「やさしめプラン」。「厳しめプラン」として、次のようなメッセージもいただきました。

「経営者として成功するための必修科目は、マーケティング、ファイナンス、人間的魅力など、少なくとも100科目ある。すべての科目で100点を取れれば1万点だけど、そんな人は存在しない。猛烈な努力をして9割取れる人が、1万人中100人くらい。その100人のうち、運命の女神が微笑む人はたったの2-3人なんだよ」。成功には、気合いと運の両方が必要だということですね。

清水さんもしばしば、「どうして成功できたんですか?」と聞かれるそう。そんなときは、「諦めずにやり続けたからです」と答えるようにしているんだとか。諦めるタイミングはたくさんあるけれど、ちょっとずつ前に進めればいいと考えているそうです。

 

「若者にメッセージをお願いします」


最後に井上さんにうかがったのは、若者へのメッセージ。

「目標設定、戦略立案、実行……何かをなし遂げるために必要なものは、たくさんあります。でも何より重要なのは、『やりたい!』という、自分の内側から湧き出てくる情熱です。どんなフェーズにおいても助けてくれる人はいるはずだけれど、情熱だけは借りられない。自分の中から溢れだしてとまらないものを大事にして、やりたいことをやってください!」

 

◉ライタープロフィール

西嶋結

編集の仕事をしています。2012年に半年間の旅行を経験し、現在に至るまで訪れた国は50か国とすこし。日本では積極的に引きこもっています。本好き。

フォトグラファープロフィール

チャリ旅グラファー/ROY

1993年生まれの26歳。チャリ旅しながら写真と動画を撮るチャリ旅グラファー。 大学3年終了時に夢がないまま就活をすることに疑問を感じ、オーストラリアに2年間ワーキングホリデーへ。渡豪3日目で自転車を買い、初海外にして初の旅となる自転車旅をする。10,000kmを走破し、オーストラリアの広大さと人々の暖かさに魅了され、旅の虜になる。現在は東京でTABIPPO学生支部のマネージャーとして、海外に行きつつ旅の魅力を発信し続けている。2020年から世界一周自転車旅へ。